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ア・ク・リ・ル・の・ハ・ナ・シ

アクリル樹脂の歴史

今ではどこでもみられるアクリル製品ですが、アクリル樹脂が日本で実用化され始めたのは1935年で航空機の風防などの軍事利用が目的でした。
その後1950年代には生産が本格化し現在に至っています。

現在、アクリルには大きく分けて押し出し板とキャスト板があります。
押し出し板は未硬化のアクリル樹脂をローラーに通し作る製法です。
キャスト製法はガラスの間に樹脂を流し込み硬化させる方法です。

押し出し板の特色としては

  • 厚さのばらつきが少ない。
  • 接着が綺麗にできる。
  • 低価格である
  • 熱曲げがしやすい

などが挙げられます。

デメリットは

  • 傷がつきやすくソリが出やすい。
  • 着色版の種類が少ない。
  • 大きい板の種類が少ない。
  • 接着剤がついたところがへこみやすく、クラックが発生しやすい

などがあげられます。

キャスト板の特色は

  • 硬度が比較的高く傷つくにくい。
  • 大きい板の種類が豊富。
  • 着色板の種類が多くある。厚い板の種類がある。

デメリットは

  • 価格が高い。
  • 板の厚さにばらつきがある。
  • 溶剤接着だと強度があまり出ずに接着部分にヒケが生じる。

上記のような長所、短所があります。

尚、初めの方で「アクリルには大きく分けて押し出し版とキャスト板があります」
とお話ししましたがそのほかにもある一社ではエルキャスト(Lキャスト)
という製法でアクリル板を製造しています。
このエルキャストという製法ではステンレスのベ大きく長いベルトとベルトの間にモノマー(アクリルの未硬化の原料)を流し込み硬化させる方法です。
我々が使った印象としては一般のキャストアクリルより多少柔らかいという印象があります。

又、アクリル全般の特徴として絶縁性に優れ劣化しにくく、傷がついた場合でも比較的簡単に研削・研磨することが容易にできます。

アクリル樹脂の用途はその特徴を活かし、メガネのレンズ・カメラのレンズ・自動車のヘッドランプやテールランプ・大型、小型水槽・照明カバー・ショーケース・小物入れ・プライスカード差し、など多種多様な製品が作られています。

少し話はそれますが、先ほど押し出し材のことを話しましたが、この押し出し材にはロッドがあり、三角ロッド・四角ロッド・そして丸いロッド(要するに棒です)があります。
これでアクリルの細い糸を作ってみようかと思い立ち実験してみました。
実際のアクリル繊維の原料はアクリルニトリルですから全く繊維とは異なるものになります。
このアクリル丸棒をバーナーで熱し少しずつ引っ張ると伸びて行きます。
これを何回か繰り返すと太さにバラツキは出ますが一応細いヒモができることがわかりました。
これをアクリル作品に応用できないか、現在、思案中です。

話がそれついでに……。

オブジェの作品の中に黒薔薇という画像があります。
これはフォトグラファーからの依頼で「黒く非常に光沢のあるバラができないか」との問い合わせがあり色々考えた結果、
塗装するこを提案し、了解してもらいました。

このバラはその時作った一つです。
まず、バラのパーツを作りエッジを丸め一つ一つ曲げながら組み立てて行きます。
曲げる場合も厚い手袋をしているためツルツル滑ってしまいなかなかうまく行きません。
考えあぐねた結果、片方にラジオペンチ、もう片方にアヒルのくちばしのような金属を作りそれをラジオペンチに接着した
工具を作り、ラジオペンチで挟んで加熱したものをアヒルのくちばしの方へ移し替えある程度冷めたら
前に作ったパーツに接着して行きます。

これを繰り返し、バランスを見ながら組み立てて行きます。
なんと、この工程だけで1日を費してしまいました。
さあ、塗装です。乾燥を遅らせるためリターダーをたっぷり入れ、エアブラシで吹き付けて行きます。
で、す、が、細かいブツブツが消えません。又、細かいところまで入って行きません。
サンドペーパーで落としリトライしますが、多少良くなる程度で思ったほど光沢も出ません。
どうやらエアブラシでの塗装は難しいようです。

あと、考えられる方法はドブ漬けです。ドブ漬けの場合ラッカー塗料は使えません。
アクリルが薄いためぐにゃぐにゃに曲がってしまうからです。
塗料の選定に注意が必要です。

⚪︎ウレタン塗料⚪︎シリコン塗料⚪︎フッ素塗料など種類は色々ありますがテストしたことがなく、
綺麗にできるかもわかりません。

そこで考えたのが「カシュー」という塗料です。

昔、使ったことがありますがあまりにも硬化が遅く時間がかかりすぎるため使用をひかえたことがあります。
逆に、これなら硬化も遅く光沢も十分出せると思い、早速取り寄せてみました。
ドブンとつけるのは良いのですが、そのままでは取り出す時手まで浸かってしまいます。
そこでバラの根元にビスをねじ込みバラを支えるホルダーを針金で作りしばらく漬け込んでから
ゆっくりあげて空気にさらします。

ただ、さらしておいただけでは硬化が遅いのでホコリがタップリかかってしまいます。
このためカバーを作り周囲からのホコリがかからないようピッタリ蓋をして様子をみることにしました。
しかし、よく見ると塗料の膜が薄くなってアクリル自体がウッスラと見えてきています。
どうやらカバーをピッタリ閉めてしまうとほとんど硬化しないようです。
色々考えた結果、アクリルでフレームを作り、メッシュを貼り、これを被せておくことにしました。

1日、二日、三日………。

透明のフレームで且つ、透明のメッシュのため中は見えますが硬化しているかは確認できません。
バラに直接触ることはできませんがポタポタとたれた塗料には触ることができるので1日ごとにカバーを開け硬化を確かめ、ようやく思い通りの光沢があるバラを作ることができました。
このカシューという塗料人工の漆と言われており、我々が見た限り本物の漆とは見分けができないほど光沢があり塗膜もかたく、一般のラッカー塗料に比べ仕上がりが良いようです。

もう一つ、オブジェの中に「波とヨット」という作品がありますが、
この「波」はどうやって作ったのかと良く質問されますので、お話ししておきます。
これはアクリルパイプ(遠心パイプ)を割り、炉にいれ少し柔らかくなったのを見計らって炉から取り出しヒネリを入れて固定し硬化させたものになります。
パイプが温まりすぎると板状になってしまいますので頃合いを見計らって炉から出すのがコツです。
曲げ専門の業者の方が使用する炉と違い、全体の温度も均一になりにくく、このようなアソビ的な
用途には適しているのではないかと思っています。

以上、アクリルの歴史、特徴などを余談を含んでお話しさせていただきました。